遺言執行者とは、遺された遺言の内容を実現する人のことを言い、「遺言の記載内容」のところでもふれたように遺言によって指定される場合と、遺言の内容によっては遺言執行者が行わなければならないものもあるため、のちに家庭裁判所によって選任される場合があります。

　ちなみに遺言執行者が行わなければならない内容としては、相続人の排除またはその取り消し、子の認知等がありますが、もしご自身の遺言がそのような内容でなかったとしても、より確実に遺言の内容を実現するために、遺言によって遺言執行者を指定しておかれることをお勧めいたします。

　なぜなら遺言執行者については、民法において「遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。（第1015条）」、「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。（第1012条）」、あるいは「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。（第1013条）」などと定められており、遺言内容を実現するための非常に重要な役割を担っているといえるからです。

　仮に遺言執行者を定めていなかった場合、遺言の内容によっては、相続人のみなさんの協力があってお手続きが進むものもあります。しかし、お時間的なもの、距離的なもの、みなさんそれぞれに諸事情あって、決してお手続きに非協力的ではなかったとしても、それなりの労力を費やすことが予測されます。

　ましてやお手続きに非協力的な方がいる場合、あるいは遺言内容に不満をお持ちの方がいる場合などでは、まったくお手続きが進まないといったケースも考えられます。

　遺言執行者を定めておかれることにより、そのような心配もなくスムーズにお手続きが進められることと思います。せっかく遺された方々のことを想い遺言を用意されるご決断をされるのであれば、実際にみなさんがお手続きをされる上でも困られることのないよう、このような配慮もふまえた遺言を作成していただけたらと思います。

　ちなみに民法には「未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。（第1009条）」と定められておりますが、逆を言えばそれ以外の方ならどなたでも遺言執行者となることができます。特に遺言執行者になるための資格が必要なわけでもなく、ご友人や相続人のどなたかを指定することも特に問題はありません。

　ですが、遺言執行者の業務には大変な労力を伴うとともに、ある程度の法律に関する知識も必要とされますので、ご友人や相続人のどなたかが遺言執行者となるにはご負担が大きいように思います。また、相続人のどなたかとなると、他の相続人の方と利害関係にあるわけですから、思わぬ誤解やトラブルが起こらないとも限りません。

　これらを勘案すると、遺言執行者を遺言によって指定しておかれること、その遺言執行者には第三者である法律に精通した専門家を選任されるのが望ましいこと、がお分かりいただけるかと思います。

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